ライターになりたければ「大手出版社の編集者を目指せ!」という身も蓋もない話を前回ご紹介しました。ただ昨今は出版業界を取り巻く状況が芳しくないとは言え、新卒で大手出版社に入るのは、良いとこの四大卒でも現実的には相当な狭き門です。
それでも、これから進路を決めるような若い学生であれば「頑張って目指してみたら?」と無責任に言っちゃいます。入ることができれば、その後とんでもなく有利になるからね。
とはいえ、自分もそんな大手出版社の編集者出身のライターではありません。
私が新卒で入ったのは「編集プロダクション」という、出版社が発行する書籍等の編集を下請けする会社。碌な学歴のない私でも入れたような、かなりブラックな企業でした。
今から約20年近く前の、まだ紙媒体が元気だった頃のお話。
あの頃はたくさん本や雑誌が刊行されていたので出版社の内部の人間だけでは手が回らず、編集プロダクションに本の制作自体を丸投げするケースが多かったんです。今でもそうですが。
カンタンに説明するなら「本の制作代行をする会社」といったイメージで大きく間違ってないかと。
そこでの仕事と言えばライターや本のデザイナー、挿絵や漫画が必要ならイラストレーターや漫画家に仕事を振り、進行管理や品質管理をするという、要するに編集者の役割をガッツリやらされます。
ライターの頭数が足りなければ執筆まで自分で行い、本や雑誌に関わる仕事は一通り体験することができました。常に人手が足りず、進行スケジュールもとんでもなくタイトだったので、仕事はメチャクチャ大変でしたけどね……。
それでもライターや編集にまつわる仕事を学ぶという意味ではこれ以上ない環境だったのはたしかです。私もそうですが、現在フリーライターとして活躍している人に編集プロダクションの出身者はけっこう多いですね。
ただし、紙媒体の勢いが衰えた今、出版社だけでなく編集プロダクションもかなり淘汰されつつあります。それでも労働条件のキツさを覚悟した上で挑戦したいという気概がある方なら、ひとつの選択肢に入れてみてもいいかもしれません。
わりとマジで大変なオシゴト
■出版系のアルバイトは意外な抜け道
実は、私の知り合いのゲームライター、アニメライターで一番多かったのが、出版社のアルバイトを経て、ライターの仕事にありついたという例です。
「バイトだからそんな重要な仕事は任せてもらえないんじゃ?」と思われるかもしれません。
たしかにバイトとして入ったばかりの頃は、読者ハガキの整理とかデータ入力の仕事といった単純作業がメインだったそうですが、周りの編集者の仕事ぶりを盗み見て勉強しながら、ちょこちょこと自分も文章が書けることをアピール。
そのうちちょっとした原稿を執筆させてもらえるようになり、バイトを辞めたあとは正式にライターとして採用してもらえるようになったとか。
昔のおおらかな時代だから許されたことだと思うかもしれませんが、実は今でも本当に“ライターになるための裏ルート”だったりします。
私のよく知る編集部でも、アルバイトながら本誌の執筆を担当している例を間近で見ていますし、正社員だろうがバイトだろうが、やる気があってちゃんとした文章を書ける人には仕事を依頼しています。
「でも自分の書きたい雑誌がアルバイトを募集してないかも」。
当然そういうケースもあるよね?
そんなときは出版社のまったく興味のない部署のバイトでいいので、試しに入ってみることをオススメします。最悪、自分の書きたい分野と全然関係ない出版社だとしても、バイトとして入ってみるのはアリよりのアリ。
全然無関係な部署、会社でも編集者同士は横の繋がりがあったりするので、編集部の人と仲良くなって「こいつアニメのライターに興味あるらしいんだよ」なんて紹介してもらえることは珍しくない。実際に私自身、こうした口利きによって駆け出しながら専門知識を持ったライターさんを紹介してもらった経験があります。
もし入ってみて全然ムリそうだったら、別の出版社のバイトに変えればいいだけですしね。身軽なバイトという立場を利用した裏ルートだと思っています。
出版関係は人脈が最重要だからワンチャン狙ってみる?
■ライター体験という意味ならクラウドソーシングも
「具体的にこういうところでライターをしたい」と決めた人ならば、少しでも早くそれを実現するために動き出すことをオススメしますが、漠然と「ライターになりたい」と思い描くレベルの人は、まずはクラウドソーシングでライターの仕事を試してみるのはいかがでしょうか。
とくに地方在住の方とか、自宅にいながら手っ取り早く“ライター”を仕事として体感できるという面で意味はありそう。
正直、ライターという字面だけで「何となくカッコいいしやってみたい」と思う人も結構見てきましたが、実際にやってみて短期間で挫折するケースも目の当たりにしているので、一生続けたいと思うなら何事も試してみることは重要かと思います。